朽ちていく街その8

この建物を見て、ハウルの動く城--をなんとなく連想してしまうのは私だけでしょうか。あのアニメの中でこんな煙突くっつけた岩みたいな奴が動き回っていなかったかな。この煙突は多分トイレの臭い抜き。戦艦大和もかくやと思える三連装。46センチ砲に比すべきもないけど、これはこれでそれなりに迫力あります。

これは寄居の某所にある古いアパートの一部です。どう見てもトイレ。私は最初何かの工場のトイレだと思っていましたがアパートでした。なんとなく下窓が出っ歯に見えてしまいます。パイプがみっつあるということは個室がみっつあったのでしょうね。いっそ十本もあったらかなり壮大。寄居の名所。

この写真一枚は実は何年か前のものです。ワタリンホ---まで見えますが、私も何かわからなくていつものごとく居酒屋で訊いてみると、これはワタリンホールという葬儀場への近道を示しているようです。向こうにホールがあるのですが、階段を上がってこの廃墟アパートを抜けて行けということなのかそれとも横の駐車場っぽいところを通り抜けろということなのか。私なら階段を上がっちゃいますね。それにしてもちょっと雄大さを感じるのは私だけでしょうか。なんだかね、軍艦の構造物を彷彿とさせますよ。

最近なって再び訪れたのですが、するといつの間にか以前はなかったフェンスがグルっとできておりまして階段の近くまで寄れなくなっていました。あの階段を登ってやれと思っていたのでちょっと残念でしたが、アパートは取り壊されることなくそのままの状態で放置されていました。訊けばもう随分長い間この状態だそうです。

このアパートはふたつ並んだうちのひとつなのですが、もう一方はまた別に書きましょう。いったいいつまで住人がいたのでしょう。この時代のトイレは普通に共同トイレだったですが、ちょっと内部を覗いて見たかったです。トイレに近い部屋は、まあね、ちょっとあったんじゃないですかね。そこに溜まっている訳だし。それにしても昔って凄いです。精々何メートルしか離れていないところにゴッソリ溜めておったのです。一般家庭もそう。今にして思えばよく平気だったですね。

お、エアコンの室外機がありますね。放置したまま出ていったのかな。下の階には白いものがぶら下がっていて明かりが点いているみたいに見えますが、完全に廃墟です。朽ちていくのは人も同じ。私もあちこち悪くてボロボロだし私の家だって相当古い。その古さに目をつけられて業者が頻繁にやってくる。中にはチンピラっぽいのも居る。今のところ我慢強くしているけど、実はかなりイライラします。それがまあわざとらしい挨拶から始まる。全然関係ない場所の壁塗りをやっていて、ご迷惑をおかけしますが…なんて言いつつタラタラと続ける。

私の家は私一代で終わり。なのでそもそも手をいれる考えはない。古いけどまだまだ大丈夫。雨漏りもしないし、あんたたちが余計な心配しなくていい。そう言って帰ってもらうのだけど、もう何度やってきたか。昔はペンタ君とかが頻繁にやってきて参りました。老いるままひっそりとさせてくれないですね。もっと古い家いくらもあるのに。

あそうそう、隣はとっくに雨漏りしてるってよ。内緒だけどね。隣本人から聞いたのだから。隣は少々訳あり。少々面倒な人。一人で住まいの事実上引きこもり。仕事もしない。町内ごとの話を通すのも大変。どうやって食べているのか不明。想像はつくけど、だから、隣もきっとそのうち空き家。あちこちそんな事情がいっぱいでしょうね。