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衰退する町を歩く

歩くと言っても自転車ですが、私の住んでいる埼玉の比企地方は地場産業として木工が有名でした。昔はどれくらいの規模だったのか、あちこちに点在していることを思えばかなりのものだったのでしょう。それがすっかり、今はダメになっているようです。以前のブログでもそんな記事を書きました。木工屋さんはとにかく機械音がうるさいのですが、いつの頃からか、どこを走っても機械音が聞えなくなりました。


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ホンの一時ですが、そんなところでもバイトをしたことがあります。以前の会社とは決別していたので、どんな仕事でもいいから働けるところがあればと思っていました。まあ、振り返れば自分でもよく持ったなと思う程あちこちで働いたし面接にも行きました。




面接に関してもあれこれあったのですが、それは機会があればまたにして、とにかく完全な不況だったし、壮年になったオッサンが働けるところなど田舎のどこにもありません。どんなところでもと言えば条件がどんどん落ちて行きます。時給も安く労働条件はないに等しい。言ってみればよその家の手伝いみたいなものですね。


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ここは、実際に私が働いた事業所です。今は稼働していません。何年か前に通り過ぎた時は、まさか閉じているとは思いませんでした。


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通えそうな場所を自転車で走って、偶然貼り紙を見つけて訪ねてみたのです。時給800円。すぐにでも来いということでした。時給800円は、バイトと言えば仕方のない金額でした。それでもひと月働けば家族にも収入があるしローンを払っても苦しいことはない。そんな計算でした。慣れてしまえばこんな労働環境も悪くはないさと。


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木工屋さんの機械は歯があって回転したり削ったり切断したりするものばかりです。危ないと言えば危ないのですが、それらがこの窓の向こうに並んでいました。その危険さよりも私が気になったのは経営者家族の雰囲気でした。最初は筋が良いとかおだてられて悪い気もしなかったのですが、実際に働いてみるとどうやら経営者の倅らしいやたらと尊大なデブッとした若造が居るし、いつも不機嫌な婆さんが居る。家族どうし仲が悪いみたいで皆が不機嫌だから職場環境なんてろくなものじゃなかったです。若造(私に比べればという話)は専務とか言っていて、とにかくやたらと偉そうでいつも機嫌の悪い婆さんよりも怒りっぽくて、何度か私も怒鳴られました。こういう人はいつか使われる身になってみれば良いのですよね



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こういう小屋を見るとつい好奇心が湧いてしまうのですが、これは控室のようで、なかなか面白い建物だと思います。いつも閉まっていて、私が働いている時ももう使われていないようでした。


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朽ちた感じがいいなあ。

カンナの使える職人は二人居たのですが、私とは悪くなかったのですが、職人どうしも仲が悪かったみたいです。眼の前でトラブルことはなかったのですが、どうもそんな気配でした。

私は、職場環境がどんなにみすぼらしくてもそれだけで嫌になることはありません。余談ですが、大昔の映画--キングコング、モノクロ米製作--を撮影したカメラマンのシェードサックと言う人もそんなタイプだったようです。つまりしみったれた世界が嫌いではないのです。しかし人間のそもそもが持っている品にはちょっと敏感なのです。この一家とは無理だなとすぐに思い始めました。特に若造とは、いつか必ずこちらの線が切れると思いました。

あまりお役に立っているとは思えないので----と言って半月分の給料を残したまま去りました。もったいなかったですが、縁が切れればそれで良いと思いました。ちゃんとした事業所なら残りを現金書留でも送ってくるものです。田舎のどうしようもない事業所で働くということはこういうものでした。周辺の居酒屋さんに潜り込んで、それとなくここはどうなったのかと訊いてみたのですが、専務さん--は今は他へ働きに行っているようです。先祖から受け継いだこれだけの土地があるし、何がどうなってもどうってことないでしょうね。

余談です。

後日、当時働いていた職人の一人とバッタリ山道で遭遇しました。こんなところを歩いているのかと思いましたが、彼は犬の散歩中でした。聞けば仕事を辞めたようでした。ズボンのバンドの上からオムツがはみ出ている。僅かな間にそんなになったのかと内心思いました。どうせ業態は良くなかったしと、そんな話を道々したのですが、職場に居る時はあちらがカンナの使える古株で先輩で年上なので私に対する言葉使いもザックバランでしたが、お互いにそこを離れた後は敬語混じりなのです。そういう区別のある人だったのだなと失礼ながら意外に思いました。こういう部分の人間の品が大事なのですよ。一杯酌み交わせば面白い人だったかも知れません。

そのついでに言いますと、もう一人の職人さんはまったくカンナの世界以外を知らず、歯がいくつも抜けているせいで言葉もやや不明瞭でしたが、無口で腰の低い人でした。その人とも何度か遭遇することがあって、聞けば周辺の居酒屋で飲んでいるというのです。勿論仕事はもう辞めていました。ところが意外なことに、そんな腰の低い人が、聞いてみると居酒屋さんのあちこちから出禁を食らっているというのです。

まったくこれは意外な話です。想像もつきません。酒で人が変わるのでしょうか。そんな気配は微塵も感じられない人でした。


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これはまた別の事業所です。久しくどこからも作業音が聞えません。一番下は材木屋さんのようです。何年か前に来た時はこの辺で犬が離れて飼われていまして、ちょっと臆病だったけど頭を撫でてやると急にじゃれてきました。もちろんその犬ももう居ません。

周辺の人口はドンドン減っていて、それなのにマンションの建設ばかりが目立ちます。どうなってるんでしょうね。

Commented by silvergray3 at 2023-11-07 11:15
木工屋さん。
ことし一月、神社の壊された戸を修繕するため大工さんに相談し、間をおいて来てくれた高齢の建具屋さんと現場で話をしていて、序に加工場の場所を聞くと、おや知っている工場があるが、、、
なんと、35年振りの再会。
はじめはお互い歳を取り、風体は変わり分かりませんでした。
わたしが自営を始め際、注文した打ち合わせテーブルその他の代金を取らなかった○○木工の元社長でした。
現在も弟子が後を継ぎ、工場を回しているようです。
こちらでも木工所や職人の数は激減しました。
Commented by yumewomitamae at 2023-11-08 11:19
> silvergray3さん
そういう再会はきっと楽しいでしょうね。
あちこちでマンションが建っているのに建具屋さんが減って行く。
どうやら障子とか襖じゃなくなったのですかね。和室が減っていると聞きましたし。
ドアを作っているところもあったのですが、そこももう稼働していません。
そう言えば宮大工さんが減って行くと神社なんかどうするのですかね。
by yumewomitamae | 2023-11-06 19:11 | 写真 | Comments(2)